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2022.11.15

エフゲニ・ボジャノフが奏でたSK–EX、読響の定期公演に諏訪内晶子とダブルコンチェルトで登場

2022年7月、ピアニストのエフゲニ・ボジャノフが来日。22日は読売日本交響楽団の定期公演に、メンデルスゾーン「ヴァイオリンとピアノのための協奏曲」のソリストで諏訪内晶子とともに登場した。使用されたピアノは『Shigeru Kawaiフルコンサートピアノ「SK‐EX」』だった。

Evgeni Bozhanov × Shigeru Kawai “SK‐EX”

Bozhanov

7月22日の読売日本交響楽団の定期演奏会で、ソリストを務めるエフゲニ・ボジャノフ(p)と諏訪内晶子(vn)。ボジャノフの音楽を追求する姿勢は使用するピアノ、おなじみの低い椅子からも見て取れる ©読売日本交響楽団 撮影=藤本崇

■クリアで美しい音深い陰影も与える表現力

昨秋のショパン国際ピアノコンクールでは、第2位のアレクサンダー・ガジェヴや第6位のジェイ・ジェイ・ジュン・リー・ブイらがShigeru Kawai『SK–EX』で演奏した。そして今年6月の仙台国際音楽コンクールピアノ部門では、6人のファイナリストが2曲ずつピアノ協奏曲を披露したが、12曲中10曲のピアノ協奏曲の演奏でShigeru Kawaiが選ばれ、大きな話題となった。

7月22日にサントリーホールで開催された読売日本交響楽団の定期演奏会では、ソリストとして登場したエフゲニ・ボジャノフが、Shigeru Kawaiでメンデルスゾーン「ヴァイオリンとピアノのための協奏曲」を弾いた。

低めの椅子に座り、端末で楽譜を見ながらピアノを奏でる。淡いロマンティシズムの漂うこの作品を、もう一人のソリストであるヴァイオリンの諏訪内晶子は、雄弁に歌い上げていく。ボジャノフは、ヴァイオリンとの親密な対話を繰り広げ、アーティキュレーションを明確に表わす。音楽をすっきりとまとめる指揮のアレホ・ペレスとも、見事なコンビネーションを聴かせた。オーケストラとヴァイオリンという異なる個性を融合する要として、ボジャノフは変幻自在にピアノを操り、音楽を力強く押し進めていった。

ボジャノフの多彩なタッチは、Shigeru Kawaiならではの重みのある音やその滑らかな響きもさることながら、羽に触れるような柔らかな音の質感や豊かな色合いを生み出し、作品に立体的な深い陰影を与えていた。メンデルスゾーンの流麗な表現においても、画一的な音の運動に陥ることなく、粒立ちのクリアな美しい音でさまざまな表情を描き出す。

メンデルスゾーンのこの作品は、ややもすると平板な演奏になりがちであるが、鮮やかで奥行きのある音楽を堪能できた。音のさまざまな要素を幅広く表出できるピアノの表現が、好演に寄与した。

■公演データ
読売日本交響楽団 第619回定期演奏会
〈日程・会場〉2022年7月22日・サントリーホール〈出演〉アレホ・ペレス(指揮)、エフゲニ・ボジャノフ(p)、諏訪内晶子(vn)〈曲目〉メンデルスゾーン「ヴァイオリンとピアノのための協奏曲」ニ短調

取材・文=道下京子
Text=Kyoko Michishita

音楽の友9月号掲載

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