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2022.11.09
2022年10月、「ピアノの森」ツアー中のピアニストの髙木竜馬さんに、Shigeru Kawaiグランドピアノとの出会いから、国際ピアノコンクールでのご活躍、TVアニメ「ピアノの森」ご出演のエピソードに至るまで、幅広い話題についてコメントをいただきました。
■ピアノの森との出会い
キャスティングのご連絡をいただいた時はとても驚きました。まさか自分が選ばれるとは、ましてやメインキャストのうちの1人を担当させていただくことになるとは思ってもみなかったんです。もちろん原作は知っていましたし、とても好きな作品です。また、ピアニスト仲間の間でもとても注目されていました。中でもコンクールの場面がとてもリアルに描写されていて、番査員たちによる会議のシーンを読みながら、本当に実際に起こり得ることだろうなと思ったりもしました。
録音で大変だったのは、登場人物の心情を理解した上で演奏をするということでした。いただいた台本に は、『最初はこういう心境だったけれど、 第2主題になるとこのような心境に変わった』『このようなセリフを言っていた』というように、細かく指示が書いてありました。雨宮修平という人物像に寄り添うことが、演奏の解釈を深める上でもとても大切でした。
私も原作のファンでしたから、自分のエゴを出して雨宮修平の人物像を壊してしまわないように注意しながら、一方で自分の音楽性を失わないようにバランスをとって演奏をしました。 このように普段のレコーディングとは異なる方向性もありましたので、自分の演奏が美しい映像と共に雨宮修平によって奏でられている完成版のアニメーションを観た時には、本当に感動しました。
■最近の演奏活動について
昨年と今年に、ピアノの森ピアノコンサートツアーを開催させていただきました。お客様には原作のファンの方々も多く、とても嬉しいことにお子様連れのお客様も沢山お見えになりました。自分のリサイタルの時には、その時自分が演奏したい曲や、お客様に伝えたい曲を弾くのですが、ピアノの森の際にはお聴き馴染みのある曲目を選んで弾くようにしています。例えば『エリーゼのために』も、改めて演奏をするとベートーヴェンの偉大さをひしひしと感じる作品です。
先日のピアノの森ツアーにて、大宮のRaiBoC Hall 市民会館おおみやで演奏をさせていただいた際に、ホールに常設されていたShigeru Kawaiを弾く機会がありました。コンサートの最後はショパンの英進ポロネーズなどブリリアントな曲で締めることが多いのですが、Shigeru Kawaiは演奏会の最後まで一緒に駆け抜けてくれる心強い存在です。
やはり最後の一音がどれだけブリリアントに響き渡るかは、その演奏会の成功に大きく寄与するところでありますが、Shigeru Kawaiは実に高らかに響いてくれるのです。それ以外にも、温かい音、優しい音から、哀しい音まで、多くの表現の幅を奏者に示してくれるピアノだと思います。
■クラシック業界の現在地
次から次へと新しい素晴らしいピアニストが輩出される、まさに群雄割拠とも言うことが出来るのではないでしょうか。コンクールにおいても、伝えたいことをしっかりと表現されてた上で評価を受けてコンクールで賞をもらっている姿に、大きな感銘を受けています。一方でYoutubeなどSNSを上手く活用されて、セルフプロデュースを用いて世の中へと出てくる方も増えてきました。活躍するための選択肢が、今まで以上に増えてきたのではないでしょうか。
自戒を込めて申し上げますが、忘れてはいけないのは、どのような音を出すか、どのような心情を乗せるかといった、音楽への姿勢の部分だと思っております。伝統を守り、受け継ぐこと、偉大なる先人の方々をリスペクトすることを、とても大切にしています。ピアニストとしてその思いを大事にしながら、これからも挑戦を続けていきたいと思います。
■髙木竜馬さんプロフィール
第16回エドヴァルド・グリーグ国際ピアノコンクールにて優勝及び聴衆賞を受賞し、一躍世界的に脚光を浴びる。その他にも第26回ローマ国際ピアノコンクールなど、7つの国際コンクールで優勝。その後、小林研一郎氏、尾高忠明氏の指揮により3回に亘って東京フィルハーモニー交響楽団と共演した他、オスロフィル ハーモニー管弦楽団との共演、ウィーン楽友協会やエルプフィルハーモニー等でのリサイタルなど、日本とウィーンを拠点に多方面で活躍。NHK総合テレビ『ピアノの森』では、雨宮修平メインピアニスト役で出演し、大好評を博す。その他にもTV『題名のない音楽会』TV『ららら♪クラシック』等々、メディアへの出演多数。故エレーナ・アシュケナージ、故中村紘子、ミヒャエル・クリスト、ボリス・ペトルシャンスキー、アンナ・マリコヴァの各氏に師事。 (公財)江副記念リクルート財団 第35回奨学生。https://ryomatakagi.com/