【インタビュー】牛田智大さん：「牛田智大ピアノ・リサイタル」

9月18日に磐田市民文化会館「かたりあ」で開催されたカワイコンサート2023「牛田智大　ピアノリサイタル」。満員御礼・盛況のうちに終了いたしました。
ご出演いただいた牛田さんにお話しを伺いました。

———会場となった磐田市民会館「かたりあ」は2022年7月に開館したばかりの新しいホールです。静岡県内最大級のゆとりを持たせた客席を持ちながら、一体感、親密感を高めることができるよう観客と舞台の距離が近いつくりとなっていることが特長ですが、演奏を終えて、ホールやステージの印象はいかがでしたか。

響きのバランスが取れた場所でした。音が過度に増幅されることなく、かといって遠いわけでもなく、舞台上の音が客席にストレートに届くため、演奏者の負担が少ないのではないかと感じました。

華やかな作品にも内向的な作品にも対応できる守備範囲の広いホールなので、これから多くの素晴らしい音楽家によってさまざまなものが上演されていくことで発展し変化していくことがとても楽しみになりました。

———本日のプログラム選曲の理由を教えてください。

ベートーヴェンとショパンという共通性の強い2人の作曲家を取り上げたいと思いました。

作品のスピリットに近いものがありますし、どちらの作曲家も「スケルツォ」というジャンルを開拓した人物という繋がりもあるので、この組み合わせは興味深いものだったのではないかと思います。

Program
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110
ピアノ・ソナタ 第23番「熱情」ヘ短調 Op.57

ショパン
スケルツォ第1番 ロ短調 Op.20
スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
スケルツォ第3番 嬰ハ短調 Op.39
スケルツォ第4番 ホ長調 Op.54

アンコール曲
シューマン:ピアノソナタ第1番　第2楽章
リスト:コンソレーション　第3番

———今回演奏で使用いただいたコンサートピアノ「シゲル・カワイ　SK-EX」は、7月末にこのホールに納入されたばかり。
約1か月の弾き込みや調整期間を経て、今回の牛田さんのリサイタルがお披露目の機会となりました。ピアノの印象はいかがでしたか。

シゲル・カワイ、とりわけSK-EXの音色はここ数年で大きく変化したように思います。
以前は内省的で素朴なカワイ・トーンが特徴的でしたが、近年ではより華やかで強靭な響きを持つようになりました。

かたりあホールの楽器もそんな現代のShigeruKawaiのスタイルを引き継いだ「今を生きる」楽器です。ストラヴィンスキーやルトスワフスキ、あるいはそれ以降の現代作品とはまさに特別な関係を持つことができるのではないでしょうか。
バランスの良いホールの響きと相まって、より力強い響きが膨らんでいくことを楽しみにしています。

———ありがとうございました。

Profile: ピアニスト  牛田智大

©Ariga Terasawa

2018年第10回浜松国際ピアノコンクールにて第2位、併せてワルシャワ市長賞、聴衆賞を受賞。2019年第29回出光音楽賞受賞。
1999年福島県いわき市生まれ。
2012年、クラシックの日本人ピアニストとして最年少（12歳）で ユニバーサル ミュージックよりCDデビュー。これまでにベスト盤を含む計9枚のCDをリリース。最新CDは「ショパン・リサイタル2022」。2015年「愛の喜び」以降、連続してレコード芸術特選盤に選ばれている。
シュテファン・ヴラダー指揮ウィーン室内管（2014年）、ミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管（2015年／2018年）、小林研一郎指揮ハンガリー国立フィル（2016年）、ヤツェク・カスプシク指揮ワルシャワ国立フィル（2018年）各日本公演のソリストを務めたほか、全国各地での演奏会で活躍。その音楽性を高く評価され、2019年5月プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管モスクワ公演、8月にワルシャワ、10月にはブリュッセルでのリサイタルに招かれた。
20歳を記念し2020年8月31日には東京・サントリーホールでリサイタルを行い、大成功を収めた。また2022年3月、デビュー10周年を迎えて開催した記念リサイタルは各地で好評を博した。人気実力とも、若手を代表するピアニストの一人として注目を集めている。