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2023.08.15

【インタビュー】ピアニスト 中根 浩晶さん「青柳 晋&中根 浩晶ピアノデュオリサイタル」を終えて

2023年7月11日(火)に愛知県名古屋市の「中電ホール」にて、カワイコンサート「青柳 晋&中根 浩晶 ピアノデュオリサイタル」が開催されました。開催に先立ち6月25日(日)にホールに新しいフルコンサートピアノ「カワイSK-EX」が納入されたこともあり、リサイタルはその新しいピアノのお披露目の記念の場ともなりました。ピアニストの中根 浩晶さんに、リサイタル当日のプログラムについてだけでなく、ホールに納入された直後からそのピアノの弾き込みや調整にご協力いただいた際のエピソードも伺いましたのでご紹介します。

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愛知県名古屋市「中電ホール」に新たに納入された、シゲルカワイフルコンサートピアノ「SK-EX」

———新しいフルコンサートピアノがホールに納入され、直後からピアノの弾き込みや調整にお力添えくださいました。その期間中のエピソードをお聞かせください。

歴史ある中電ホールにSK-EXが納入され、弾き込みにも携わることが出来たのは大変興味深い経験でした。納入されたばかりの最初の弾き込み時は、ピアノ全体がまだ柔らかい響きではありましたが、SK-EXの持つ響きの魅力は充分に感じられましたし、弾き込むにつれて少しずつ花のつぼみが開いていく印象を受けました。特に弱音の美しい響きは素晴らしく、これから成長が進むといったいどんな多彩な響きが生まれるのだろう、という大きな期待を持ちました。

調律技師(MPA -Master Piano Artisan-)の佐藤正道さんにもお会いし、楽器についてのディスカッションが出来たのも幸運でした。その時感じたのは、MPAの方のShigeru Kawaiに対する愛情と知識の深さ、技術の高さで、こうした方々の努力によって演奏家は支えられていると改めて感じました。2度目の弾き込みの際は、それまでの間にピアニストの方々によって弾きこみが進んだこともあり、SK-EXならではの伸びやかな響きや多彩な音色を響かせてくれるようになりました。花がより開いてきた印象ですね。その時はコンサート当日にも調律を担当して頂いた、MPAの宮平憲治さんに立ち会って頂くことが出来ました。宮平さんには以前から何度もお世話になっており、確かな技術を持った信頼のおける方で、ホールの音響を加味したセッティング等、相談をしながら弾き込みに臨むことが出来ました。弾きこみ時はピアノと触れ合うほど、響きの輪郭や鮮やかさが顕著に変化していくので、時間の許す限りずっと弾いていたいと感じていました。

———新しいピアノのお披露目となったカワイコンサートでのSK-EXの印象はいかがでしたか。

コンサート当日のSK-EXは、リハーサルそしてコンサート後半のプログラムに進んでいくにつれてますます楽器の響きが変化していき、煌びやかな高音の響きや強弱の表現の幅広さ等、SK-EXの魅力が伝わるようになっていくのを感じました。
楽器本来の響きになるまで数年かかると言われていますので、これからの楽器の成長過程が楽しみです。素晴らしいピアノが納入されたことに加え、中電ホールも数年前に改修され音響等の設備が刷新されたこともあり、クラシック・コンサートの機会がこれまで以上に増えるのではないか、と思います。

WEB用_CIMG36917/11  カワイコンサート「青柳 晋&中根 浩晶 ピアノデュオリサイタル」

———リサイタルのプログラムはどのように選曲されましたか。

プログラムの選曲にあたっては青柳先生とご相談をさせて頂き、前半はドイツ・ロマン派、後半は近代フランスのプログラムで構成しました。アンコールの「ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ」、「シューマン:トロイメライ」、「ラフマニノフ:組曲 第2番よりタランテラ」までを含め、音楽的な内容がありながらもSK-EXの持つ魅力、美しい弱音からダイナミックな響き、多彩な音色や表現の幅を感じて頂けるようなプログラムを組ませて頂きました。今回は管弦楽曲からの編曲作品(全て作曲家自身の編曲)も多く取り上げていますが、2台のSK-EX(第1ピアノはホール常設、第2ピアノは持ち込み)の響きの多様性と親和性を充分に生かすことの出来るプログラムとなったと思います。結果的に、かなり盛り沢山のプログラムとなってしまいましたが(笑)。お忙しい中、快く選曲の相談に乗って頂いた青柳先生には本当に感謝いたしております。

———演奏されたそれぞれの曲とSK-EXの相性はいかがだったでしょうか。

新しく納入されたピアノのお披露目コンサートということもあり、「シューベルト;幻想曲(4手連弾)」を最初に据えました。晩年のシューベルトならではの、奥深く内面的な情緒や感情の起伏を感じさせる音楽や、ドイツ・リートを感じさせるメロディーも、SK-EXの持つ柔らかく伸びやかで繊細な音色、また奥深い豊かなハーモニーの響きと相まって、細部のニュアンスまで表現しやすいと感じました。2曲目の「ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲」は、管弦楽版でもよく演奏されますが、実は2台ピアノ版が先に完成しています。主題のコラールと各変奏で見せる様々な表情、ブラームスらしい重厚感、そして構築性のある響きなどが、SK-EXの持つダイナミックレンジの広さや豊かな倍音、音色の多彩さといった表現力と相乗効果となり、それぞれの変奏の性格をより味わい深く感じることが出来ました。

後半のプログラムである近代フランス音楽と、SK-EXの相性は非常に良いですね。「ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲」の、甘美な音色や多様な色彩の響きが非常に表現しやすく、淡く繊細な表情から管楽器や弦楽器の響きまで、思い通りに楽器が応えてくれました。全ての曲で感じましたが、2台のSK-EXの響きの親和性を最も強く感じたのは、この曲であったと思います。続いての「デュカス:魔法使いの弟子」では、独創的な表現や躍動感のある響きも、SKのレスポンスの良さによって楽曲の魅力を充分に伝えることが出来たと思います。弱音の響きの美しさのみならず、華やかさと力強さも持ち合わせているのがSK-EXの大きな魅力ですね。プログラム最後を締めくくる「ラヴェル:スペイン狂詩曲」、この曲もまず2台ピアノの形で作曲されています。第1曲「夜への前奏曲」の弦楽器による繊細な陰影の表現、第2曲「マラゲーニャ」の躍動感のある多彩な響き、第3曲「ハバネラ」の魅惑的で異国情緒を感じさせる音色、第4曲「祭り」の管弦楽を彷彿とさせる華やかな音楽、煌びやかな高音の響きから重低音の支えまで、自分の身体の一部のように意図した通りに応えてくれ、時には奏者を優しく支えてくれます。SK-EXは弾き手のインスピレーション、感覚的なものを余すことなく受け取って表現してくれる楽器、という印象を受けます。

CIMG3701カワイコンサート「青柳 晋&中根 浩晶 ピアノデュオリサイタル」で演奏する中根 浩晶さん

アンコールの1曲目「亡き王女のためのパヴァーヌ」では、メロディーを浮き立たせることやハーモニーの色彩感が表現しやすく、それらを調和させることにも長けていて、音色の変化や音の余韻を普段以上に感じることが出来ました。青柳先生の演奏された「シューマン:トロイメライ」は、一つ一つの音にニュアンスをしっかり感じ取ることができ、舞台袖で聴いていても美しい音色が届いてきました。最後は「ラフマニノフ:タランテラ」で締めくくりましたが、SK-EXの力強く重厚感のある響きや、連打時のアクションの運動性の良さを感じました。情熱的、技巧的な曲との相性もとても良いですね。プログラムのメッセージにも書かせて頂きましたが、SK-EXは弾き手の表現したいことをそのままに伝えることができ、演奏することによって感性を高めてくれもする、生命力に溢れるピアノだと今回のコンサートを通して改めて感じることが出来ました。

最後にお伝えしたいのは、SK-EXのこうした魅力はその他のSKシリーズモデルにもしっかりと反映されているということです。私は自宅でもSKを愛用していますが、音の伸びやかさや表現の幅、また自分の想いに応えてくれる反応の良さなど、その魅力を充分に感じることが出来ます。お話を伺うと、SKは1日に数台しか製造されていないそうで、河合楽器さんの妥協しない楽器制作へのこだわり、企業理念も楽器を通して感じることが出来る、素晴らしい楽器だと思います。

■中根 浩晶さん プロフィール

中根浩晶

愛知県出身。東京藝術大学附属音楽高等学校、東京藝術大学卒業後に渡独し、ドイツ国立ベルリン音楽大学を経て同大学院修了、ドイツ国家演奏家資格を取得する。

東京藝術大学卒業時に同声会賞、読売新人賞受賞。中部ショパン学生ピアノコンクール第1位、飯塚新人音楽コンクール第1位、第2回ベルリナー・ピアノコンクール第2位等国内外のコンクールで受賞。ドイツ滞在中にデビューリサイタルを開催し、演奏活動を開始。室内楽奏者としての評価も高く、ウルフ=ディーター・シャーフ氏をはじめとする著名な奏者と共演する。帰国後もセントラル愛知交響楽団のメンバーとの共演や、河合楽器主催のコンサートにて青柳晋氏とベートーヴェンの第九(リスト編)を共演するなど、ソロ・室内楽の演奏会に多数出演している。ソリストとして藝大フィルハーモニア、ドイツ・ブランデンブルク交響楽団等とも協演。飯田真樹:「ピアノ作品集第1集」(fontec)をはじめ、レコーディングも行うほか、コンクール審査員やセミナー講師を務めるなど幅広く活動している。
ピアノを杉浦日出夫、小林仁、ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ、ガブリエーレ・クプファーナーゲルの各氏に師事。室内楽を渡辺健二、ヴォルフ=ディーター・バッツドルフ、クルト・ザンデルリングの各氏に学ぶ。
現在、金城学院大学文学部音楽芸術学科准教授、愛知県立明和高等学校音楽科非常勤講師として後進の指導にあたっている。日本ショパン協会正会員。

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