ニュース
2023.08.25
7月29日-8月6日に開催された「第4回Shigeru Kawai国際ピアノコンクール」。
見事ファイナルに進出した6名。この記事では、ファイナリスト6名の1人、佐川和冴さんの本コンクールでの軌跡を演奏動画とインタビューでたどります!
「Shigeru Kawaiはもっと今後も弾きたいピアノです!」「ライブ配信されていたので、演奏後ちょっとエゴサしました(笑)」と気さくに語ってくれた佐川 和冴さん。
考え抜いて選んだプログラムの演奏、演奏中の想いや気さくなお人柄がよくわかるインタビューをたっぷりとお楽しみいただける記事になっています!
「第4回Shigeru Kawai国際ピアノコンクール」まとめ記事
1998年埼玉県生まれ。
東京音楽大学ならびに同大学院修士課程を首席で修了
第90回日本音楽コンクールピアノ部門第2位。
第31回宝塚ベガ音楽コンクール第1位。
第15回日本演奏家コンクール最高位。
第15回東京音楽大学コンクールにおいて史上最年少で第1位。
ザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2022室内楽部門にて最高位。
Carles & Sofia International Piano CompetitionにてGold Hands受賞。
2018年第39回霧島国際音楽祭賞を受賞。
東京音楽大学短期留学奨学生としてモスクワ音楽院(ロシア)に留学。
Villa Sandra Piano Academy(イタリア)でモスト・プロミシング賞を受賞する他、Chetham’s International
Piano Summer School(イギリス)、浜松国際ピアノアカデミーなどでも研鑽を積む。
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団との第72回ティアラこうとう定期演奏会に抜擢され好評を博した他、東京交響楽団や東京フィルハーモニー交響楽団等と共演する。
現在、東京音楽大学大学院音楽研究科に在籍し、石井克典、高田匡隆の両氏に師事する傍ら非常勤職員として演奏研究員を務めている。
2020年度公益財団法人青山音楽財団奨学生。2021,22年度一般財団法人福島育英会奨学生。
J.ブラームス / 「7つの幻想曲集 Op.116」より第1番 奇想曲 ニ短調
J. ブラームス / 「7つの幻想曲集 Op.116」より第2番 間奏曲 イ短調
J. ブラームス / 「7つの幻想曲集 Op.116」より第3番 奇想曲 ト短調
J. ブラームス / 「7つの幻想曲集 Op.116」より第7番 奇想曲 ニ短調
A. グリュンフェルト / 「ウィーンの夜会」 ヨハン・シュトラウスのワルツ主題による演奏会用パラフレーズ Op.56
F.J. ハイドン / ピアノソナタ ロ短調 Hob.XVI:32
C. ドビュッシー / 「前奏曲集 第2集」 より 花火
R. シューマン / 謝肉祭「4つの音符による面白い情景」 Op.9
L.v. ベートーヴェン / ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 Op.58
J.ブラームス / 「7つの幻想曲集 Op.116」より第1番 奇想曲 ニ短調
J. ブラームス / 「7つの幻想曲集 Op.116」より第2番 間奏曲 イ短調
J. ブラームス / 「7つの幻想曲集 Op.116」より第3番 奇想曲 ト短調
J. ブラームス / 「7つの幻想曲集 Op.116」より第7番 奇想曲 ニ短調
A. グリュンフェルト / 「ウィーンの夜会」 ヨハン・シュトラウスのワルツ主題による演奏会用パラフレーズ Op.56
F.J. ハイドン / ピアノソナタ ロ短調 Hob.XVI:32
C. ドビュッシー / 「前奏曲集 第2集」 より 花火
R. シューマン / 謝肉祭「4つの音符による面白い情景」 Op.9
L.v. ベートーヴェン / ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 Op.58
—セミファイナルを終えて今の感想をお聞かせください。
そうですね。自分的にはこのセミファイナルは、ハイドンとドビュッシーとシューマンを演奏したんですけど、自分の良さをが出せるように、偏った時代の作曲家ではなくて、色々なキャラクターを持った作品を選ぶようにしました。今日はそれが自分なりに、よく表現できたかなと思ってます。
—1次予選、セミファイナル、ファイナルの演奏曲目はどのように組まれましたか?
1次予選は、時間が15分~20分ととても短いので、たくさんの人の印象に残るよう考えました。
自由曲は、自分が得意とする、アンコールピースのようなもの、グリュンフェルトのコウモリのパラフレーズを演奏しました。課題曲のブラームスは、自分がずっと前から勉強していて自信のある作品です。
セミファイナルは、シューマンの謝肉祭を中心に考えたんですけど、自分はロマン派の作曲家よりも古典派の作曲家も好んで演奏しているので、ソナタを入れたいなと思っていました。ソナタは音数が少ない分、非常にその人の技術が丸裸になってしまうので、怖かった部分もあるんですが、今日は落ち着いて演奏できました。
謝肉祭は、たくさんのキャラクターが出てくる大曲で、その前にドビュッシーの花火を入れました。自分の中では、花火と謝肉祭を連想してプログラミングしたつもりです。
ファイナルは、『古典派を弾きたい』と思い、ベートーヴェンの4番の協奏曲を選びました。オーケストラとも過去に1度演奏したことがあるんですけど、とても美しい作品です。 ファイナルの中では、やっぱりロマン派で、華々しいヴィルトゥオーゾ系の作品がどうしても選ばれがちだと思うんですけど、自分はその中でも、音色や、自分の音楽性をよりストレートに伝えたくて、ベートーヴェンを選びました。
—ファイナル出場、おめでとうございます!率直に今の感想をお聞かせください。
セミファイナルを弾き終えた時に、自分の中で手応えというか、 『もしかしたら次のラウンドに進めるかも?』という自信があったので、審査員の方々に評価していただけたのはとても嬉しいです!
©Shigeru Kawai 国際ピアノコンクール委員会
—ファイナルの演奏を終えて、今のお気持ちをお聞かせください。
ソロでの演奏でしたが、ネルセシヤン先生(伴奏のオケパートを担当)と一緒だったので『1人じゃないんだ』と思えて心強かったです。ですが、なぜかこれまでのラウンドで1番緊張して、結構1番手が冷たくなっちゃって…。楽章が進むにつれて、温まってきて、どんどん自分の音楽ができたかなと思います。ホールも近かったし、人もたくさん入ってたので、響きとか、音のバランスとか、色々考えながら、演奏できたかなと思ってます。
—このコンクールの特色でもある「2台ピアノの協奏曲」いかがでしたか?
普通はと言ったらあれですけど、ファイナルというと「オーケストラと協奏曲を演奏する」っていうのが、一般的だと思います。 それが、2台ピアノとなると、より細かな、入念な打ち合わせ、息使いの1つ1つを直で伝えたり伝わってくるので、オーケストラでやるよりも、2台ピアノでやる方が、より密に1つの音楽を作れるのではないかと思います。
オーケストラとやる機会よりも、学内での試験だったりとか、協奏曲を練習するにあたって、オーケストラパートを他人に弾いてもらったりする機会が多いので、そういう意味では、(2台ピアノに)慣れてたし、素晴らしい伴奏のおかげで、自分のベートーヴェンが良くなったかなと思ってます。
—ネルセシヤン先生との共演はいかがでしたか?
ロシアの先生との共演なので、ロシアの作曲家の協奏曲をやりたいと最初は思っていたんです。
実は、延期される前に出した曲目のレパートリーとしては、チャイコスキーのコンチェルトを出していたんです。延期が決定して、今自分がとても大事に勉強している作品がベートーヴェンだったので、この曲を先生と一緒に勉強というか、演奏したいと思って選びました。リハーサルから、ネルセシアン先生が色々アドバイスしてくださったので、よりインスピレーションが湧いたし、素晴らしい多彩な経験を積まれてる方なので、オーケストラの音色を1台のピアノで鳴らすというとても難しいことを隣でしてくださって、自分もとても弾きやすくて素晴らしい時間だったなと思います。
—1次予選、セミファイナルとは会場が変わりました。変化はありましたか?
変化はとてもありましたね。まずパウゼ(1次・セミファイナルの会場)のピアノではないピアノでしたし。(*1)
ピアノのコンディションも、自分のコンディションもありますけど、やはり、ホールとなると、サロンとは違って、 弱い音から強い音まで、客席の1番奥のところまで、よりクリアに伝えなきゃいけないなという意識をもって演奏しました。天井もこのサクラホールのボックス型(前の席からこう斜めに天井が上がっていく形ではなく、どこも同じ高さの天井)だったので、どういう風に2階席に聞こえているんだろうなと、ちょっと不安なところもあったんです。自分はベートーヴェンという、ロマン派に比べると音数が少ない曲だったので、より一音一音がはっきりと、『多分今奥まで行ってるんじゃないかな』って、響きを意識しながらホールでは弾きました。そういう点はもう弾いてくうちにどんどんどんどん改善、改良しつつ、こう、弾き切れたんじゃないかなと思います。とても素晴らしいホールだなと思いました。
*1:1次・セミファイナル、ファイナルでは同じSK-EXですが異なる個体を使用
一次、セミファイナルの使用ピアノ=カワイ表参道 サロン パウゼのピアノ
ファイナルでの使用ピアノ=伴奏者 仙台国際ピアノコンクール使用機 / コンテスタント ショパン国際ピアノコンクール使用機
—最後にご来場のお客様や配信を視聴された皆さんへ向けてメッセージをお願いいたします!
Shigeru Kawai国際ピアノコンクールっていうのは、第4回を迎えてるわけですけど、1回目から素晴らしいピアニストの方々が入賞されてきて、そこに今回自分がファイナルとして残れたこと自体光栄ですし1つの目標でもあった国際コンクールでのファイナル進出というのも叶って、協奏曲をもうお客様の前で弾けたことはとてもいい経験だったと思います。今の時代というか、もうコンクールを配信するっていうのが割ともう当たり前になってきてるから会場に来れなかったお客さんでも、どこからでも聞けるので自分をより多くの人が知ってくれたと思うし、 より自分の音楽を伝えれたかなと思うので、とても嬉しく思います。
—今のお気持ちはいかがですか?
1週間という結構タフなスケジュールだったんですけど、ここまで来れて、そしてSKコンクールのひとつの醍醐味でもあるロシアの先生とオーケストラパートでファイナルの演奏するということが叶ったので、すごい嬉しかったです。ファイナルまで進めたことで、大好きなベートーヴェンを弾けて、さらに自分の演奏を評価していただけて本当にうれしかったです。
—コンクールで一番印象に残ったステージをお聞かせください。
自分が初めてピアノリサイタルを行ったのが、実は表参道のカワイのパウゼで、東京音楽大学のシリーズだったんですけども、実は久しぶりのパウゼでの演奏機会でした。これまで、シゲルカワイのピアノは、幾度となく演奏してきたんですけど、やっぱりカワイ表参道のパウゼのピアノっていうのは、特別な思いも入りますし、素晴らしいピアノで自分を助けられた部分がたくさんありました。これからもたくさん演奏していきたいピアノですし、もっともっとこうシゲルカワイのピアノを演奏して、自分も頑張りたいと思ってます!
—一夜明けて、受賞された感想をお聞かせください。
まだしっかりと寝ていないので、あまり一夜明けた感じはしていないです(笑)。
今日のガラコンサートで、やっぱりこの人は2位の人だなと思われる演奏すれば実感が多少湧くのではと思います。今日までコンクールだと思ってるので、まだ気が抜けないなという感じですね。
—Shigeru Kawai国際ピアノコンクールはいかがでしたか?
とてもタフなスケジュールではあったのですが、他の国際コンクールは3週間とか、もっと長期にわたって、予選が5日間とか長い時間かける場合もあります。自分が弾いてから結果が出る日にちまでが今回は短かったので、そういう面ではストレスは少なかったです。ただ用意した曲をいつどんな時でも、クオリティがいい状態で弾けるようにしておかなきゃいけないっていう意味で、気が抜けなかったです。また順番も自分はファイナルが決まったら、またそこでくじ引きなのかなと思っていたら出場順だったりしたこともあったので、自分の中では色々臨機応変に対応できたかなとは思ってます。
ライブ配信されたことも良かったです。最近はコンクールがライブ配信されることが増えてきているので、自分も演奏が終わった後にちょっとX/twitterでエゴサーチしたり、どのうような評価をされているか、一般の人たちにどのように聞こえていたかなっていうのは、ちょっと気になったりしました(笑)。
コロナが落ち着いてきましたが、しばらくの間は、演奏後に直接、お客さんと対面して感想を聞けるような状態ではなかったため、もう自分を信じてやるだけでした。その意味でも今回、聴衆賞をいただけたのは、審査員の方々はもちろんではありますが、一般のお客さんにも受け入れてもらえたなととても嬉しく思います。これまで国際コンクールを多く受けてきたわけではないですけど、やはり日本での開催ではあったものの、海外からもたくさん参加者が来て、今回ファイナルも3人が外国の方だったので交流を深めることもできましたし、これからもまた、違う場で出会うかもしれないので、色々な経験ができたのは、良かったなと思ってます。
—SK-EXの印象、出会い、初めて弾いたときの思い出、音色などをお聞かせください。
自分は今回のプログラムで、叙情的な曲というよりは、結構華やかで明るい、全体的にも結構キャラクターがはっきりしてる曲をプログラミングをしましたが、 そういう曲にもとても合っていました。SK-EX自体が元々きらびやかな音をしてるし、とても弾いていて心地がいいピアノなので、その上に、さらに自分の選んだプログラムと重なって、とても弾いていて、普段の自分の演奏よりもさらにうまく聞こえてるというか、こういう音色も自分は出せたんだなという、自分の中の引き出しも増えた気がします。またラウンドが進むにつれて、 シゲルカワイをたくさん弾きこんできたから、最後の舞台ではもう本当に悔いなく演奏することができて、 助けられた面もあるし、新しい自分も発見できた面もあるし、とてもいい収穫になったなと思ってます。
タフなスケジュールの中、何度もインタビュー対応に気さくに、そして真摯に応じてくださった佐川 和冴さん。
今後の更なる活躍を応援しています。