ニュース

  • HOME
  • ニュース
  • 【インタビュー】イリヤ・シュムクレルさん

2023.09.18

【インタビュー】イリヤ・シュムクレルさん

2023年6月29日(木)に、三井住友海上しらかわホール(愛知県)にて行われたイリヤ・シュムクレルさんによるカワイコンサート。
リサイタルに合わせて実施したインタビューでは、日本の印象や、アメリカの大学について・先生との出会い、そしてShigeru Kawaiについて聞きました!

Ilya-SHMUKLER_3s

ピアニスト:イリヤ・シュムクレル

イリヤ・シュムクレル

モスクワ出身。1994年生まれ。
第3回Shigeru Kawai 国際ピアノコンクール優勝者
2021年、チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院にて、エレーナ・クズネツォワ、セルゲイ・クズネツォフの指導のもと、修士課程を優秀な成績で修了。
現在はミズーリ州パークヴィルのパーク大学国際音楽センターでスタニスラフ・ユデニッチに師事している。

—日本の印象について教えてください。

2015年に初めて日本に来て、日本の雰囲気に感動してから、来日は今回で4度目になります。
一般的に日本の観衆はとても温かく、とても反応がよく、とても注意深く、そしてとても情熱的です。また、これは、アーティストにとって最も重要なことのひとつだと思っていますが、日本の観衆は「何を聞いているのか、わかっている」のです。すばらしい日本の観衆のみなさんには、今回も期待を裏切られなかった、期待通りの反応を得られたといえますね!

音響、作曲家、演奏家、そして観衆のすべての要因が組み合わさった時、とても大事なエネルギーを生み出せると思っています。そして、このエネルギーというのが、「音楽を理解してそのムードに浸る」ことを担っていると思っています。今回すべての要素、ピアノも含めて完璧でした。

Shigeru Kawaiはこれまでたくさん弾いてきましたが、個人的に世界一のブランド、そしてピアノだと思っています。
また、今回弾いた名古屋のホールもすばらしかったですね。湿度もちょうど良い感じで、乾燥や、またその逆に湿度が高く感じることもなかったです。音の跳ね返りが、一番後ろの席まで届いて戻ってきているのを感じることができました。
そうですね、ピアノ、音響、そして観客のみなさんの3つの要素が演奏者が”独自の世界”を造り上げるのを助けてくれますし、それぞれの要素がすごく重要、いや、極めて重要だと考えています。

—日本という国の印象はどうですか?

日本というのは、自分にとって特別な場所です。大人になってから初めてした旅の旅先のひとつでした。
はじめて、1人きりで違う国に行くというのはすごく特別で、感動したのを覚えています。日本人は、すごく温かく、礼儀正しくて…それぞれ、お互いが明確に何をしているのかをわかりあっている…そんな感じがして、プロフェッショナルな人たちだと感じました。

日本の食べ物も大好きです。そうそう、日本でお寿司とお刺身を食べてから、日本以外の他の国でお寿司、お刺身を食べることをやめました(笑)。

もちろん音楽的にも、日本はすばらしいと思っています。記憶に残っているのが、仙台に行ったときに地下鉄の駅でショパンやモーツァルトが聞こえてきたことです。他の国で、同じようにクラシック音楽に触れられるようなことはなかったと思います。プロの音楽家ではない人も、クラシック音楽に触れて育つというのは、“人間”としてとても重要なことだと思いますし、もちろん私にとってとても大事だと思っています。
なので、今回の来日も含めて、日本というのは来るたびにすごく刺激を受ける場所ですね。

Ilya-SHMUKLER_4s

カワイ表参道にて

—渡米のきっかけやミズーリ州について教えてください。また、現在師事しているスタニスラフ・ユデニッチ先生はどんな先生でしょうか?

私の出身のモスクワはとっても大きな、眠らない都市といった感じで、なんだかそこに住んでいるすべての人が急いでいて、リズムが早く、時には自分の居場所がわからなくなってしまうような、そんな都市なんです。

カンザス州は、そんなモスクワと全く異なる性質をもった場所ですね。カンザス州はアメリカのちょうど真ん中に位置し、たくさんの森に囲まれている場所です。私がいるパーク大学は、ミズーリ川にとても近く、森や自然に囲まれていて、本当にモスクワとは完全に異なる場所です。ミズーリにいると、とても落ち着いてリラックスできるので、考える時間をたくさん確保できますし、時間がたくさんあるということは、勉強する場所としてとても有利な土地なのではないかと思っています。時間がたくさんあるので、“変わる”ための時間がたくさんありますから。

スタニスラフ・ユデニッチ先生は、これまで自分が考えもしなかったアドバイスをくれ、人として、そしてピアニストとしての質が向上するような変化を与えてくれています。それに、パーク大学は、おそらくですが毎日24時間好きに練習ができるという点で、“唯一の大学”だと誇れると思っています。時間があるとき、もちろん自分の気持ちが向いている時ですがいつも練習し、向上に努めることができるので、ピアニストとしてだけでなく、人として成長する変化をくれる、そんな面白い場所だと思っています。

—先生とはどのように知り合ったのですか?

先生は、ロシア・モスクワでもすごく有名な方です。モスクワでもマスタークラスを開講していたことがあります。
今でも、先生に初めてFacebookでメッセージと動画を送った時のことを覚えています。
「こんにちは、もしお時間があったら僕の演奏を見て、アドバイスをくださいませんか?」こんな感じで送ったんです。
そしたら、驚くことに「もちろん聞きますよ!もし、お互いがちょうどアメリカにいるときに、カンザス州に来てください。自分のアドバイスに対する君の反応が見たいので!」という返事が来たんです。ちょうど、演奏のためにニューヨークにいて、何日かオフが取れたので「ちょうど今アメリカにいます。」といって、ちょうどカンザス州にいらっしゃった、ユデニッチ先生に会いに行くことになったんです。

いよいよチケットを手にして、カンザス州についたあとは、先生とプチレッスンをしました。すると、レッスン後に先生が
「オッケー!ぜひパーク大学へ、ようこそ!」って言ったんです(笑)。
「わかりました、いつ試験を受けたらいいですか?」と聞いたら「たった今終わりました。」と言われて…(笑)。
そういう流れでユデニッチ先生と知り合い、そしてすぐにパーク大学へ行くことになりました。
初めて先生にお会いしてプチレッスンを受けたのは2018年で、入学したのはShigeru Kawaiコンクールを受けた2019年と、入学までに手続きのために時間はかかりましたけどね。

Ilya-SHMUKLER_1s

—Shigeru Kawaiのピアノの印象について教えてください。

2015年に初めて日本に来た時、あの時初めてShigeru Kawaiに触れました。
初めて触れたその瞬間から音色に何か特別なものを感じ、魅了されました。というのも、初めて弾いて音色を体感した時、それがステージ上で、観客もいるという緊張するシーンにも関わらず、とてもリラックスして、心地の良さを実感するという少し面白い体験をしたからです。

また、音色だけでなく鍵盤も大好きです。深すぎず、重すぎず、かといって“押しやすい”というものでもない、つまり鍵盤の“深さ”がとにかく完璧で、アクションも素晴らしく、Shigeru Kawaiは“魂”から魅了されるような、そんな“光”を持ったピアノだと思っています。

“光”と言いましたが、太陽の光のような、こんなことを言うとばかげているように聞こえますが、なんだかピアノが微笑んでいるような…もちろん弾き方にも左右されるとは思うのですが、そんな音色に感じています。Shigeru Kawaiを弾けば弾くほど、その“微笑み”を感じられるのが、とても面白いと感じています。
音色はとても多様で、それぞれの音がすばらしいですし、ペダルも応えてくれる。カワイの音というのはピアノを弾かなくても聞こえるんです。

なんというか、ピアノと対峙する必要がないというか。それがとてもすばらしい点だなと思っています。一言でいうと、とてもすばらしいパートナー、そんなピアノですね。

Copyright © Kawai Musical Instruments Mfg. Co., Ltd. All Rights Reserved.

pagetop

試弾予約