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2023.07.25

亀井聖矢さんインタビュー Vol.1

ピアニストの亀井聖矢さんが、6月9日のカワイコンサートNo.2332に登場。

宇都宮文化会館でのリサイタルを前に、「リサイタルのプログラム」「ファーストアルバム”VIRTUOZO”」、
そして昨年第1位および聴衆賞、評論家賞を受賞した「ロン=ティボー国際コンクール2023」についてお話をうかがいました。

全2回にわたってご紹介する、亀井さんのインタビュー。今回は第1弾です。

取材・文=武田奈菜子(音楽ジャーナリスト)

広島市で行われたリサイタルのダイジェスト版動画はこちらから。

亀井聖矢さん

 

  • 今回のプログラムについて

今まで超絶技巧的なものを多く弾いてきた中で、これからピアニストとして内面的な作品を勉強したいという思いから、前半をショパン《マズルカOp.59》《幻想曲》《アンダンテ・スピアナートと華麗な大プロネーズ》で構成しました。後半はラヴェル《ラ・ヴァルス》やストラヴィンスキー《ペトルーシュカからの3楽章》のような華やかな作品を選んで、前半と後半を対比させるようにしました。ショパンの作品では、ピアノ一台で織り成される美しい繊細なハーモニー、メロディー、リズム感を楽しんでいただき、後半のラヴェルとストラヴィンスキーは、管弦楽の作品がピアノ編曲されたものですので、管楽器、打楽器などのさまざまな音色を、ピアノという楽器の枠を越えてどのように表現できるかを聴いていただきたいと思いました。

  • 昨年12月にリリースしたファースト・アルバム”VIRTUOZO”

”VIRTUOZO”というタイトルの通り、技巧的に難しい作品をどれだけ音楽的に聴かせられるかということと、20歳の自分ならではのフレッシュなエネルギーを、一旦今の形で閉じ込めておきたいということで、これまでも弾き馴染んできたリスト、ラヴェル、バラキレフなどの作品を集めて一枚のアルバムにしました。アルバムは何回も繰り返し聴かれるものなので、細かいことを気にしがちですが、こぢんまりした演奏に収まらないように気をつけました。
リストは彼自身がピアニストとして、今、僕たちが弾いているのと同じように『お客さまを楽しませたい』という想いが大きかった作曲家だと思います。『お客さまに対して何を提供できるのか』という部分で共感できる作曲家なんです。エンターテイナーなのか、音楽家なのか、ピアニストなのか……どういう言葉がぴったりくるのかわからないですけれども、「音楽的にも技術的にも聴き応えがあって、圧倒される」というのも一つの楽しみ方だと思いますし、総合的にいろんな面で満足していただきたいと考えています。

  • ロン=ティボー国際音楽コンクール2022で第一位! 聴衆賞、評論家賞も受賞

2次審査では、プログラムをひとつの大きな物語にしたいなと考えて構成しました。ショパンの《24の前奏曲から第16番》を必ずプログラムに入れければならないことになっていて、はじめは「どうしてこれだけ抜き出して弾かせるのかな?」と思いましたが、「《第16番》をプログラムの中でどう聴かせられるか」という意味合いもあるのかなと、《第16番》にどういう意味づけを持たせられるかを考えました。脈絡なくただ作品を並べるよりも、自分の中にある明確なコンセプトを打ち出した方が説得力もあると思いました。それで《第16番》を、「夜のガスパール」の後、細川俊夫さんの「ピエール・ブーレーズのための俳句」の前に入れることにしました。やはり本来《第16番》の位置づけとしては『雨だれ』の次なので、その雰囲気を作ってから弾きたいと思って、『夜のガスパール』の水のイメージの後にしたのです。『スカルボ』が消え入るように終わったら、食い込むように《第16番》に入っていきたいと思いました。そして、《第16番》が激しく終わったら、その延長のようにまた激しいタッチ感で流れ込むように細川さんの『ピエール・ブーレーズのための俳句』にいきたかった。そして、その世界観、響きの方の世界がどんどん拡張されていって、最終的にGの単音になって響きが終わり、リスト=ベッリーニの《「ノルマ」の回想》もGの音から始まるという音楽的なつながりと調性とを考えて全体のプログラムを決めたんです。

亀井聖矢さん

 

 

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