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2024.12.26

【Report】ロン=ティボー国際音楽コンクール2025(ピアノ)日本予選ファイナル

ピアノ音楽誌「ショパン」2025年1月号に掲載されているロン=ティボー国際音楽コンクール2025(ピアノ)日本予選ファイナルのレポート記事、今回特別に転載許可をいただいたので、ご紹介いたします。

11月1日 ベルサール虎ノ門
取材・文/森岡葉

集合写真前列左から審査員:ジャン=マルク・ルイサダ氏、マルク・ラフォレ氏、酒井茜氏、野原みどり氏
後列左から日本予選通過者:大山桃暖さん、高尾真菜さん、島多璃音さん、神原雅治さん、伊舟城歩生さん、稲垣慈永さん

20世紀前半のフランス音楽界の中心的な存在であったピアニストのマルグリット・ロン、ヴァイオリニストのジャック・ティボーによって1943年に創設されたロン=ティボー国際音楽コンクール。若き音楽家の登竜門として、多くの国際的名演奏家を輩出している。ピアノ部門では、歴代の優勝者に日本の清水和音、野原みどり、田村響などそうそうたる顔ぶれが名を連ね、近年では、2019年の第1位に三浦謙司、第2位に務川慧悟、2022年には亀井聖矢が韓国のイ・ヒョクと第1位を分かち合った。

そのような日本人ピアニストの活躍を踏まえて、2025年3月にパリで開催されるコンクールの日本予選が、(株)河合楽器製作所とのパートナーシップ協定締結によって実現した。この協定により、日本予選、およびパリで開催される本選には、近年世界での活躍が目覚ましいカワイのコンサートピアノ『SK│EX』が用意される。

ビデオ審査、第1次予選(10月28日・29日)を経て11月1日のファイナルに進出したのは、11名の若き俊英たち。第1次予選では、ショパン《ピアノ・ソナタ第2番》第1楽章・第4楽章、ショパン《練習曲 作品10│2あるいは作品25│4》、フォーレ《即興曲第2番》、プロコフィエフ《10の小品「スケルツォ」》という課題を全員が弾いたが、ファイナルは20分から25分の自由なプログラムで、個性あふれる演奏を楽しませてくれた。

審査発表の際、審査委員長のマルク・ラフォレ氏が「全員を通したかった」と語るほどハイレベルな戦いを制したのは、大山桃暖(おおやま もだん)さん、伊舟城歩生(いばらき あゆむ)さん、稲垣慈永(いながき じえい)さん、神原雅治(かんばら まさはる)さん、高尾真菜(たかお まな)さん、島多璃音(しまた りいと)さんの6名。来年のパリでの活躍が期待される。

※ 本選出場者はロン=ティボー国際音楽コンクールサイト(https://www.long-thibaud.org/en/)に掲載

 

【 審査員インタビュー 】

●日本予選審査委員長
マルク・ラフォレ氏
才能豊かな若者たちの演奏に驚きました。近年の日本人ピアニストの躍進は素晴らしいと思います。その一因は、グローバリゼーションではないでしょうか。日本の若いピアニストたちが留学したり、海外のマスタークラスを受講したり、国際コンクールに参加したり、さまざまな経験をすることによって自身の音楽性の幅を広げていると感じます。とくにフランス音楽に対する感受性、音色の質が優れていて、フランス音楽をフランス人より理解しているのではないかと思うほどです。
第1次予選は、全員がほぼ同じ課題曲を弾きましたが、やはりショパンは難しいですね。《ピアノ・ソナタ第2番》の第1、第4楽章は、マルグリット・ロンの遺言によって、80年にわたって課題曲に指定されていますが、ピアニストの資質が見える作品です。
私の審査の基準は、その人が自分の音楽を真摯に作っているかどうかということです。入賞者の方たちには、来年のパリの大会に向けて、それぞれの作品にもう一度向き合い、自分の音楽をどう作るかということを考えてほしいと思います。

ジャン=マルク・ルイサダ氏
第1次予選の課題曲は、すべてが難しかったですね。ショパンのソナタ、エチュード、そしてフォーレとプロコフィエフ。最終的に選ばれた6名は、素晴らしいピアニストたちです。ファイナルでは、彼らの自由なプログラムを、コンクールではなくリサイタルのように楽しませていただきました。
第1次予選の課題のフォーレ《即興曲第2番》は、真のアーティストにしか弾けない作品です。テクニック的にも難しいですが、中間部の美しいメロディーを音楽的に深く歌わせるのも難しい。20世紀初頭のフランス文学に通じるものがあるのではないでしょうか。フランス人にとっても難しい作品です。
ショパンのソナタも、やはり難しいですね。パリの大会でも、全員がこの作品を弾くわけですが、序奏の左手のオクターヴで、天才的な演奏になるか、酷い演奏になるか、わかってしまいます(笑)。
私の審査の基準は、音楽をどのように構築しているかということです。日本予選を通過した6名のファイナルの演奏は、最初の一音から最後の一音まで、私たちを魅了してくれました。彼らのパリでの活躍に期待します。

野原みどり氏
初めて開催された日本予選ですが、とてもレベルが高く、人数を絞るのは悩ましいところでした。とくにファイナルは自由曲だったので、それぞれのコンテスタントの芸術的な技量を判断するのは難しかったです。2015年のコンクールを審査させていただいたときのインタビューでも話したのですが、日本人のコンテスタントは基礎がしっかりしていて安心して聴いていられる。それはとても大事なことだけれど、真面目なだけの演奏になりがちなので、自分が表現したいもの、作曲家がその曲にどのような想いを込めたのかを汲み取って演奏してほしいと思います。

酒井茜氏
第1次審査の課題曲のショパンのエチュードは2曲とも難しいですし、さらにソナタ、そしてプロコフィエフのスケルツォとフォーレの即興曲、大変だったと思います。でも、皆さんとても優秀で、見事な演奏でした。ファイナルは自由曲なので、デュティユーのソナタを弾く人もいれば、ベートーヴェンの《エロイカ変奏曲》や後期のソナタを弾く人もいて、それぞれ興味深く聴きました。私は古典の方が難しいと思うので、あえて古典を選んだコンテスタントの勇気を称えたいと思います。パリの大会に向けて、6人の方たちには〝いい音〟を求めてほしいですね。今回と同様、パリのシゲル・カワイも素晴らしいピアノだと思うので、楽曲の解釈をどれだけ音色に反映させられるか、頑張ってください!

 

【 日本予選通過者のコメント 】

大山桃暖さん
(大阪音楽大学ピアノ演奏家特別コース1年)
課題にショパンのソナタ第2番とエチュード作品25│6が入っていたので、この機会に取り組んでみたいと思い、参加しました。カワイのピアノは弾きやすく、自由曲の《ペトルーシュカからの3楽章》など、楽しく演奏することができました。

Oyama Modan

伊舟城歩生さん
(東京音楽大学大学院修士課程修了)
予備予選の段階から4人の審査員の先生方に演奏を聴いていただけることに魅力を感じて参加しました。課題曲、とくにショパンのエチュードが難しく、苦労しましたが、自由曲のラヴェル《鏡》は大好きな作品で、ピアノの音色を楽しみながら演奏しました。

Ibaraki Ayumu

稲垣慈永さん
(京都市立芸術大学3年)
海外で開催されるコンクールに参加するのは初めてなので、とても楽しみです。課題曲のショパンのソナタが難しかったですが、ファイナルは自由曲だったので、あまり気負わずに自然に演奏し、ピアノも豊かな響きでそれに応えてくれました。

Inagaki Jiei

神原雅治さん
(名古屋音楽大学ピアノ演奏家コース4年)
第1次予選の課題曲は技術的にも音楽的にも難しく、少し不安な要素もありましたが、満足のいく演奏ができました。カワイのピアノには家でもレッスンでも親しんでいて、仙台国際音楽コンクールでも弾きました。タッチや音色が大好きです。

Kanbara Masaharu

高尾真菜さん
(名古屋音楽大学大学院2年生)
自由曲にベートーヴェンの後期のソナタを選んだのは、大きな挑戦でしたが、評価していただき、とてもうれしいです。会場の雰囲気、スタッフの方たちのサポートも温かく、楽しく演奏しました。カワイのピアノは、表現したいことを汲み取って音にしてくれます。

集合写真

島多璃音さん
(東京藝術大学卒業・リヨン国立高等音楽院留学中)
自由曲のデュティユーのソナタは、昨年から国際コンクールや卒業試験などで弾いていたのですが、カワイのピアノで弾くのは初めてで、インスピレーションを刺激されながら演奏することができました。ホールにそのまま飛ばせる音が出せたかなと思います。

Shimata Riito

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