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2022.12.15

【インタビュー】ピアニスト 太田糸音さん vol1

2022年11月末、カワイプレミアムコンサートin虎ノ門にご出演いただいた、ピアニストの太田糸音さんに、仙台国際音楽コンクールでのご活躍、ドイツ・ベルリンでの生活や今後の目標に至るまで、幅広い話題についてコメントをいただきました。

太田糸音5

■仙台国際音楽コンクールを振り返って

私にとって仙台国際は、ナイーブになりすぎることなく過ごすことができたコンクールでした。これまでもさまざまなコンクールに挑戦してきましたが、振り返ると結果の良し悪しに関係なく、演奏以外のことも含めて、苦しい思い出といいますか、悲しく感じることが多々ありました。そういったこともあり、実をいえば、今回の仙台は日本で受ける最後のコンクールにしようと、はじめから覚悟を決めていました。

選曲に関しても覚悟を持ってのぞみました。予備予選の段階からあえて自由曲にバッハをいれる選択をしましたが、その曲で予備予選を通過できたことが、よりいっそう自信につながりました。続く一次予選では、唯一のソロでのラウンドでしたので、聴いてくださる方への自己紹介という思いで、バッハとメンデルスゾーンをメインにプログラムを組み、さらにプロコフィエフを入れました。これは規定に沿いつつも、私らしい、いちばん私でいられるプログラムです。最終的にすべてのステージで演奏できたこと、高い評価をいただいたこと、お客さまのあたたかい声、それらは今も私の励みになっています。

実のところ、一次予選は私の中であまりよい出来ではありませんでした。一方、セミファイナルは手ごたえを感じることができたラウンドでした。結果は登録順に発表されるのですが、セミファイナル後の発表の際、私はいちばん最後に呼ばれたんです。最後の一人となった時は緊張が最も高まりましたが、ファイナリストに決まった時は安心しましたね。

オーケストラとの実際の共演で学ぶことは大変多く、迎えたファイナルでは、コンクール中に感じた新たな課題や発見を、二曲のコンチェルトでどこまで形にできるのか取り組みました。これに関してはまだ納得のいく形にならなかったものもありましたが、最終的に上位3名に残ることができました。

太田糸音2

■Shigeu Kawaiグランドピアノを選んだ理由

素晴らしい響きを持つホールでしたので、どのピアノを選んでも素晴らしい音が出せたんだろうなと思いつつ、私が選んだ作品と求めている音がどこまでマッチさせられるか、本当にこれでいいのかと、ぎりぎりまで悩みました。今回私が選んだ曲はドイツ音楽とプロコフィエフです。異なる音のキャラクターが求められる選曲でしたが、最終的にShigeru Kawaiなら安心してすべてのラウンドを任せられると思って決めました。

今回、私は芯のある音、響きの中に空気感を含んでいて、どんなダイナミクスも無理な力なく会場のすみずみまで飛んでいく音を求めていました。それに応えてくれたのが、Shigeru Kawaiだったのです。特にバッハの作品はすぐにイメージと実際の音がハマりました。ホールとの相性もとても良かったと思います。

もうひとつ決め手となったのは、調律スタッフの存在です。2021年、オンライン開催となったシドニー国際ピアノコンクールに出場した際、私はすべてのラウンドでShigeru Kawaiを演奏し、またカワイの調律スタッフに広くサポートいただきました。おかげさまでシドニーでは第6位に入賞することができましたが、この仙台でもふたたび同じ調律スタッフが関わって下さると聞き、前回の経験からふたたびShigeru Kawaiを選択することに致しました。

太田糸音1

■仙台国際音楽コンクールのエピソード

日本人ピアニストはもちろん、留学先の校友や、別のコンサートやマスタークラスで知り合ったピアニストとも広く交流することができました。また事務局やスタッフの方々がとてもあたたかく迎えてくれたのも強く印象に残っています。一次予選の本番が終わったとき、自分の演奏に悔いが残って思わず涙をこぼしてしまいましたが、そんなときもスタッフの皆さんが優しく励ましてくださいました。

過去の優勝・入賞者の方とも関わる機会があり、コンクールに参加する前から充実したサポートについて話を聞いていました。やはりコンチェルトの課題と、仙台の街に惹かれて参加を決める方が多いように思います。個人的にヴァイオリン部門の課題が非常に心惹かれました。

セミファイナル以降、当日のリハーサルのみならず、事前リハーサルも会場で、実際に選ぶピアノで行うことができたことは驚きでした。そのため、幸いにもピアノの調整についてリハーサル前後に多くのお願いを出すことができました。また他の参加者の演奏(コンチェルト)を客席で拝聴しましたが、配信で聴くのとは大きく異なる印象もあり、こちらもまたいい学びとなりました。

仙台は空気も食べ物もおいしいですよね。ドイツに戻ったあと何人かの出場者とお会いして、コンクールを振り返る機会があったのですが、仙台はよかったね、と皆さん口を揃えて仰っていました。それってとても素敵なことですよね。コンテスタントへの手厚いサポート、お客さまへのホスピタリティ、街をあげておもてなししてくださったなと今でも感謝しています。

《Vol2に続く》

https://www.shigerukawai.jp/news/20221221/

 

■太田糸音さんプロフィール

2022年第8回仙台国際音楽コンクール第3位、第7回コインブラ・ワールド・ピアノ・ミーティング第1位、2021年シドニー国際ピアノコンクール第6位に入賞。国内でも幼少期より全日本学生音楽コンクール、ピティナ・ピアノコンペティション、松方ホール音楽賞等にて多数優勝・入賞を果たす。
NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」ABCテレビ「キャスト」特集等のメディアに出演、NHK Eテレで放送されたアニメ「クラシカロイド」作中では原曲演奏を担当、Warner Music Japanより配信限定アルバムをリリース、2018年CHANEL Pygmalion Daysアーティストに選出、自主企画公演やオーケストラ、室内楽共演、新曲世界初演など活躍の場を広げている。2022年10月ルドルフィヌム(チェコ・プラハ)でのラヴェル:ピアノ協奏曲ト調の演奏は《彼女は技巧が非常に優れているだけでなく、作曲家の意図を完璧に共感することができる》と評された。
2000年大阪府生まれ。東京音楽大学付属高等学校を早期修了、20歳にて同大学を早期卒業。現在は名古屋芸術大学大学院および明治安田クオリティオブライフ文化財団奨学生としてベルリン芸術大学に在学し、横山幸雄、ビョルン・レーマン、高橋礼恵の各氏に師事。
ホームページ https://www.shion-ota.com

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