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2022.12.21

【インタビュー】ピアニスト 太田糸音さん vol2

2022年11月末、カワイプレミアムコンサートin虎ノ門にご出演いただいた、ピアニストの太田糸音さんに、仙台国際音楽コンクールでのご活躍、ドイツ・ベルリンでの生活や今後の目標に至るまで、幅広い話題についてコメントをいただきました。

太田糸音3

■ドイツ・ベルリンでの生活について

いま私はベルリン芸術大学の大学院に在籍中で、ドイツでひとり暮らしをしています。留学してよかったことのひとつは、ビョルン・レーマン先生のレッスンを受けられたことです。レーマン先生は私が勉強したい分野の知識がとても豊富で、私がアイデアを1出せるとしたら先生は10出すことができます。奥様の高橋礼恵さんもとても素晴らしいピアニストで、お二人からいい影響を受けています。

コミュニケーションは基本的にはドイツ語です。大学院でのレッスンもすべてドイツ語で行われます。ドイツの部屋は日本に比べて天井が高いため圧迫感がなく、解放的な印象です。あとベルリンはとても寒い街なので、11月の時点で気温がマイナスになることもあります。日頃の体調管理も大切ですね。

ドイツでの練習環境についていえば、わたしはほとんどは大学で練習しています。特に平日は授業とレッスンで埋まっている部屋が多いため、分刻みでの取り合いとなります。また日曜日は休息日なので、大学でのみ練習する曜日となっています。ドイツの多くの古い建物はリノベーションしていることが多いため、壁や床板が防音ではなく少しの生活音でも近隣に聞こえてしまいます。

幸運なことに、住んでいるアパートメントでは楽器の練習ができるため、部屋にピアノを入れることができましたが、法律でRuhezeit(安静時間/静かにする時間)というものがあり、毎日夜22時〜翌朝6時、昼間2〜3時間(住む建物によります)、日曜日・祝日は全日、大きな音を出してはいけません。

ですので、家では譜読みや個人的な勉強で弾くこと、音を鳴らさず練習することが多いです。限られた時間でいかに効率よく練習できるか、それでいて本来の目的を見失わないよう、練習に励んでいます。あとはそうですね、情報過多の世の中ですが、そういったものから離れる時間をつくったりもしています。ぼーっとするのが好きなんです。

太田糸音4

■ピアニストとして日々、心掛けていること

最近心掛けていることは、いかに自然体でいられるかということでしょうか。何かしらのゴールを決めると準備が捗るのも事実ですが、それだけになってしまってゴールを終えたとき、もぬけの殻になってしまうことがありました。そのような経験からもっと気持ちにゆとりをもとうと、高校生になった頃から意識するようになりました。

以来、ここまではしっかり調整しよう、ここからは自由にしようといった具合に、日々、試行錯誤を重ねながら今日まで過ごしてまいりました。私自身、性格に臆病者なところがあり、それを隠したいと思っていました。今もなお、考え込みすぎるところがございます。でもそれらも私であって、決して悪いことだらけではない。そういった意味もあり、自然体の自分をまず受け入れるということを心掛けています。

本番に関してですが、周囲から普段の太田糸音と舞台上の太田糸音はまるで違うとよく言われます。自覚もあるのですが、私自身は変えているつもりはないんですよね。ですが、その時に演奏する作品やプログラムによって本番への入り方に違いがあるのかもしれません。本番直前で気にかけていることといえば、身体をほどよくほぐすこと、コンタクトレンズが乾かないように目薬をさすこと、喉が渇かないよう水分を多めに口に含むことです。

時間帯にもよりますが、身体が重く・軽くなりすぎないように食べる量を意識することもあります。ただこちらは先日の仙台国際音楽コンクールの際、うまく調整できなかった部分があるので、今も自分に合う方法を探っています。

いかにして自分のベストな状態を作る・上げていけるか、どんな調子でも必ず『弾く』ことができるように、これまで心がけてきました。ありとあらゆる感情が生まれることは今を生きている確かな指標となるもので、色々な経験はきっと自分の未来を創る大きな要素となると思います。

どんなことも受け入れて、視点を増やすと不思議と景色が広がっていく、時に見たことのない景色に戸惑いを覚えるかもしれないけど、それらをまずは楽しんでみる。これが今のわたしの生き方、大切にしていることです。

太田糸音6

■ピアノをはじめたきっかけと今後の目標

両親ともにジャズとポップスのミュージシャンで、幼い頃から音楽が溢れる家庭で育ちました。私がクラシック音楽を専攻したことも、両親は新鮮さとともに楽しんでくれていたように思います。ピアノについては、最初はドの音くらい分かればいいかなと思っていたのが、もう少しだけと言っているうちに、ここまで来てしまった感じです。

もともとは作曲家になりたいと思っていました。ところが中学生にあがる頃、カワイ表参道で三善メソードの演奏会を聞いて、自分にはこんな凄い作品は書けない、と思ったのと同時に、こういう作品を弾けるような人になりたいと考えるようになりました。

この先、日本とドイツとの行き来がもっとできるようになるといいですね。今のところ演奏拠点というものをあまり意識していません。いろんな国や地域で演奏して音楽の輪を広げたいと思いますし、今まで取り組んでこなかった作曲家の作品にも挑戦したいと考えています。

全曲演奏したい作曲家もいるんです。10年以上は第一段階の準備期間となるかと思います。他にはソロの演奏ももちろん素晴らしいですが、室内楽やコンツェルトでの演奏もやっていきたいですね。クラシック以外の音楽にも興味がありますし、コンクールも出場していきたい。今がいちばん多くを吸収し、感じながら挑戦もできる時期だと思っています。

 

■太田糸音さんプロフィール

2022年第8回仙台国際音楽コンクール第3位、第7回コインブラ・ワールド・ピアノ・ミーティング第1位、2021年シドニー国際ピアノコンクール第6位に入賞。国内でも幼少期より全日本学生音楽コンクール、ピティナ・ピアノコンペティション、松方ホール音楽賞等にて多数優勝・入賞を果たす。
NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」ABCテレビ「キャスト」特集等のメディアに出演、NHK Eテレで放送されたアニメ「クラシカロイド」作中では原曲演奏を担当、Warner Music Japanより配信限定アルバムをリリース、2018年CHANEL Pygmalion Daysアーティストに選出、自主企画公演やオーケストラ、室内楽共演、新曲世界初演など活躍の場を広げている。2022年10月ルドルフィヌム(チェコ・プラハ)でのラヴェル:ピアノ協奏曲ト調の演奏は《彼女は技巧が非常に優れているだけでなく、作曲家の意図を完璧に共感することができる》と評された。
2000年大阪府生まれ。東京音楽大学付属高等学校を早期修了、20歳にて同大学を早期卒業。現在は名古屋芸術大学大学院および明治安田クオリティオブライフ文化財団奨学生としてベルリン芸術大学に在学し、横山幸雄、ビョルン・レーマン、高橋礼恵の各氏に師事。
ホームページ https://www.shion-ota.com

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