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2025.06.26
〜人生の彩りを重ね、より豊潤でたおやかな音楽表現へ〜
ピアニスト・小林愛実さんが語るShigeru Kawaiの魅力
――― 今日のコンサートの曲目はどのような理由から選ばれたのでしょうか?
今回は2025年という節目の年にふさわしく、後半はショパン後期の傑作であるソナタ第3番を軸として、同時期に作られたマズルカ3曲を組み合わせました。前半は、演奏会に馴染みやすいように、まず今年生誕150周年を迎えるラヴェルの作品を3曲演奏し、次にシューマンのクライスレリアーナへと続く流れを作りました。実は、クライスレリアーナは以前からずっと弾いてみたかった作品なんです。ショパンに献呈されている作品でもありますので、全体として良い流れが作れたのではないかと思います。
――― 藤枝市民会館ホールでの演奏は初めてとのことですが、ホールの印象はいかがでしたか?
藤枝市民会館ホールでは、照明などで環境を整えていただき、皆さんがとても集中して聴いてくださって、本当に良い空間でした。
――― 今回使用されたコンサートピアノ「Shigeru Kawai」についてはいかがでしたか?
私、Shigeru Kawaiが本当に好きなんです。何といっても温かい音色が魅力ですね。決して重すぎることなく、ふくよかで、バランスが非常に良い。全体的に均等で弾きやすく、響きが豊かで、演奏していてとても心地良いピアノです。
以前もカワイコンサートでShigeru Kawaiを弾かせていただいたことがあるんですが、実はそのピアノはショパンコンクールで使用されたものだったんです。その時の弾きやすさが印象的で、実際ショパンコンクールの本選でも、Shigeru Kawaiとスタインウェイのどちらにするかすごく迷ったんですよ。ショパンコンクールでは、コンテスタントがピアノを選ぶ際に、複数のピアノがステージ上に置かれて試弾できるシステムになっているんですが、その時はShigeru Kawaiがステージの端に置かれていて、スタインウェイが中央にあったんです。それでスタインウェイを選んだんですが、もし位置が逆だったらきっとShigeru Kawaiを選んでいたと思います(笑)。
―――普段もShigeru Kawaiを愛用してくださっていますね。
そうなんです。自宅のピアノもSK(Shigeru Kawai)なので、普段の練習にはほとんどそれを使っているんですよ。だから、Shigeru Kawaiにはとても親しみを感じています。
カワイの調律師の方にもいつも丁寧に対応していただいていて、ピアノ選びに迷ったときは、信頼している調律師さんに相談するんです。「Shigeru Kawaiとスタインウェイ、どちらが合いそうですか?」といった具合に。すると、「今回はもしかするとスタインウェイの方が合っているかもしれませんね」と、自社の製品にこだわらず、演奏スタイルや曲目に合わせて的確にアドバイスしてくださいます。
―――結婚・出産を経て、ご自身の演奏に変化はありましたか?
自分ではよくわからないんですが、音楽というのは、歩んできた人生が必ず反映されるものだと思うので、少なからず変わっているとは思います。結婚、出産を経て、それまで自分が持っていなかった感情や体験を得ることができたので、以前と今とでは間違いなく違いがあると思いますね。
特に意識しているわけではないんですが、自分の性格や生活パターンなど色々なことが変わってきたので、それが自然と音楽に反映されているのかもしれません。最近よく周りの方々からも「変わった」と言われるので、きっと演奏にも何かしらの変化があるのでしょうね。
―――今日の演奏では赤いパンツスーツの衣装がとてもお似合いでしたが、衣装も最近は変化されたのでしょうか?
海外では最近こういうスタイルが人気で、演奏家の方々があまりドレスを着なくなってきました。昔は華やかなドレスを着て演奏していましたが、最近はこうしたスレンダーなスタイルが流行っているので、時代の変化を感じますよね。でも、たまにドレスを着ると、それはそれでピシッとして気持ちが引き締まります。
―――ご主人の反田恭平さんとの連弾も度々披露されていますが、ご自宅で打ち合わせや練習をされるのですか?
連弾は当日ぐらいしかリハーサルしません(笑)。ただ、レコーディングの時は12分程度の長い作品だったので、3、4回ほどリハーサルを行いました。
実は私たち、音楽的なアプローチがかなり違うんですよ。でも、お互いに違うからこそ、それぞれが持つ独自性を大切にしています。彼には私にはない素晴らしい音楽性がありますし、私も彼とは違う表現力を持っている。それぞれの個性が、お互いにとって良い刺激になっていると思います。
―――最近、反田さんにもShigeru Kawaiを勧めてくださったそうですが、それはどんな理由からですか?
彼は指が太いので、Shigeru Kawaiの特徴であるふくよかで豊かな音と非常にマッチするだろうと思って勧めました。Shigeru Kawaiの素晴らしいところは、個々のピアノの特性と調律師の技術によって、実に様々な音色を生み出せることです。繊細な音色からダイナミックな音色まで、本当にバラエティに富んでいるんですよ。音楽家一人ひとりの個性に合わせて調整できる懐の深さがあるので、彼にとってもきっと良いパートナーになると思います。
―――今度アルバム化するなら、どの作曲家の作品がいいですか?
これまでのショパンに続き、昨年初めてシューベルトのアルバムを出させてもらいましたが、シューベルトのアルバムはぜひまた制作したいと思っています。シューマンも自分にとても合っている作曲家だと感じているので、いずれレコーディングしてみたいですね。
それに、モーツァルトも子どもの頃から長く弾き続けているだけに、自分になじみ、自信を持って演奏できる作曲家の一人なので、いずれレコーディングしたいと思います。でも、すぐにというわけではありませんよ(笑)。人生長いですから、これから少しずつ挑戦していきたいと思います。
―――今後の演奏活動への抱負をお聞かせください。
こうして日本で数多くの演奏会をさせていただけて、本当にありがたく思っています。コンサートがあまりなかった時期もありましたから、今の状況には心から感謝しています。今後は海外での演奏活動も積極的に行っていきたいですね。共演してみたいオーケストラや、演奏してみたいホールがたくさんありますので、頑張って実現したいと思います。
―――最後に、小林さんを目標にピアノを頑張って練習している子どもたちにメッセージをお願いします。
私を目標にしてくださるなんて、本当に嬉しい限りです。どんな職業でも一つのことを極めるのは大変なことです。でも、諦めずに信念を持って自分が目指す道を突き進んでいけば、必ず新たな発見があると思います。
ピアノの練習はもちろん大切ですが、それだけでなく、オーケストラ作品を聴いたり、生の演奏会に足を運んだりして、様々な刺激を受けることも大切です。そうした経験が、きっと自分の音楽につながっていくはずです。
もし演奏家を目指すのであれば、可能であれば若いうちに海外で勉強することもお勧めします。海外に行くことが絶対に良いというわけではありませんが、様々な文化的背景を持つ人々との出会いは貴重な財産になります。私も17歳でアメリカに留学し、初めて一人で生活する中で多様な文化に触れ、数多くの出会いを重ね、それによって人間として大きく成長できたと思います。
ピアノだけに集中するのではなく、友だちと遊んだり、新しいことに挑戦したりと、いろんな経験をして自分らしさを磨いていただきたいと思います。
-小林さんサイン入りCDプレゼント-
本公演を記念して、CDにサインをくださいました。ご希望の方に抽選で1名様にお送りいたします。ご希望の方は、氏名とご住所をご記入の上、下記のメールアドレスまでご応募ください。応募締め切り:8月31日(日)
Schubert / シューベルト:4つの即興曲作品142、ピアノ・ソナタ第19番ハ短調、ロンド イ長調
小林愛実(ピアノ)
Aimi Kobayashi, Pianist
2021年10月「第18回ショパン国際ピアノコンクール」 第4位入賞。
7歳でオーケストラと共演、9歳で国際デビューを果たした。数多くの国に招かれ、スピヴァコフ指揮モスクワ・ヴィルトゥオーゾ、ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ、ソヒエフ指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管など多数のオーケストラと共演。2010年14歳でEMI ClassicsよりCDデビュー。
2015年10月「第17回ショパン国際ピアノコンクール」ファイナリスト。
2018年ワーナークラシックスとインターナショナル契約し、「ニュー・ステージ~リスト&ショパンを弾く」をリリース。2021年8月CD「ショパン:前奏曲集 他」をリリース。
2024年11月に最新CD「シューベルト:4つの即興曲 作品142、ピアノ・ソナタ第19番 ハ短調、ロンド イ長調(連弾)他」をリリース。
2022年3月、第31回出光音楽賞受賞。
■Shigeru Kawaiフルコンサートピアノ 『SK-EX』について
「世界一のピアノづくり」を目指す当社が、2001年に発表したフルコンサートピアノのフラッグシップモデル。コンサートピアノとして要求される最高の表現力を実現するために、響板には十分に厳選した材料だけを使用し、原器工程と呼ぶ伝統的な手作り工程で生産。またShigeru Kawaiグランドピアノシリーズで採用した新素材を随所に取り入れた革新的なウルトラ・レスポンシブ・アクションIIが、高い連打性と安定したタッチ感を提供する。繊細で伸びやかなピアニッシモに加えて、力強い輪郭のはっきりした響きが特長。