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2014.06.04
今年度のカワイコンサートが、5月15日(木)宇都宮市民文化会館小ホールでの鵜塚一子ピアノリサイタルを皮切りに、いよいよ始まった。当日は午前9時に、浜松から運ばれたピアノが会場に搬入された。フルコンサートピアノSK-EXである。
さっそく調律が始まる。この日のコンサート・チューナー(調律技術者)は、小野寺仁志氏。優秀な調律技術者を数多く擁するカワイの中でも、ほんのひと握りの、特に高度な専門技能者として位置づけられているMPA(マスター・ピアノ・アーティザン)と呼ばれる同社内資格を有する調律技術者の一人である。
ピアニストがコンサートで最高のパフォーマンスをするためには、ピアニスト本人の実力と不断の努力などは勿論のこと、演奏する楽器が最高のものであり、なおかつその楽器の持つ能力をピアニストが余すところなく発揮できるように最良の調律・調整を行うコンサート・チューナーの存在が欠かせない。
どんよりとした空模様のこの日、小野寺氏はステージ上の照明を全開にして、湿気の影響を受けないように湿度を30%に保たせたいささか暑い中で、午後1時過ぎまで入念に調律を行っていた。作業終了後に小野寺氏にお話を伺った。
【Q】どのような点に注意して調律しているのですか?
カワイコンサートではプロのピアニストが弾きますので、弾き易いタッチと、音がよく鳴って聴いている方にもきれいな音で迫力も伝わるよう、全体をまとめるのが一番重要なことだと思います。どんな曲を弾くのかによっても求められる音は違いますし、ピアニストからの要望もありますので、そういう要望にできるだけ沿って調律・調整をしています。
運び込んだ楽器の場合は、輸送のリスクもありますし、到着してからの環境の変化もあって狂いが生じますので、結構大変です。そういう点ではSK-EXは安心感があります。狂いが少ないですし、調律の落ち着き方が違います。
【Q】コンサート・チューナーから見たSK-EXの最大の魅力は何ですか?
音に関してはパワフルで力強さが一層出てきましたし、ピアニストの要求に応えられるタッチの面での弾き易さも出てきました。それに安定性ですね。コンサートでは激しい曲が弾かれる場合もありますから、耐久性はピアノにとって非常に重要なことです。そういう面で一層よくなったと思います。
ピアニストにとってコンサート・チューナーは、いい演奏をするための必要不可欠なパートナーである。そこにSK-EXのような最高のピアノが加わったら、これはもう鬼に金棒と言えよう。これがカワイコンサートなのである。
横谷貴一(音楽ジャーナリスト、元「レッスンの友」編集長)